「ヨオロッパの世紀末」吉田健一 岩波文庫
著者の吉田健一は、総理大臣を務めた吉田茂の長男です。多くの著作がありますが、著者のもっとも円熟した時期に書かれた傑作です。吉田健一の文体は独特です。奇妙と言っていいほどですが、紆余曲折しながら進む文章に導かれていくと、豁然と展望の開けた高台にいることに気付きます。ヨーロッパが真にヨーロッパであった18世紀「幸福は決して得られるものではないという諦念が、われわれを本当に優雅なものにしてくれる」という言葉に集約される人類の精華であったヨーロッパを香り高く語り、それがどのように堕落に転じ、19世紀の終わりが世紀末と呼ばれた次第を、鋭い活眼で描いていきます。本当のヨーロッパの姿を描いて見せた名著です。
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