Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

現代詩 ねずみの死

ねずみがうずくまって死んでいる
いかにもやさしく目を閉じて
コンクリートの冷たさも
もう気にならない
物音に身を縮めることもない
尻尾は全く垂れた


生きている間必死に餌を求めて飛びまわっていた
姿に比べれば
これはなんと荘厳な姿だろう


死の一瞬を覚悟したもののように
手足は平静に開かれている


死んだねずみの傍らを絶え間なく流れていく時間
そうして
生きている私


ねずみと私とのちょうど真ん中に
私は握りこぶしほどの石を一つ置いた


死がその沈黙の声を親しく語りかけてくるように


猫が来た
しばらくにおいを嗅いで
そのまま咥えて行った
死がまた一つ
わたしの記憶の底に沈んだ