Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 枯れるということ <高橋義孝>

上掲の人は、横綱審議委員も務めたこともある、ドイツ文学の研究者で、今の人には、耳遠く感じられる人であるのは、間違いない。


もう、亡くなってから、何年経つであろうか、という人である。ただ、新潮文庫のフロイトの「夢判断」と「精神分析入門」の訳者は、今も、この人の筈だから、少し教養のある人には、それで通るかもしれない。


この人の著書に、「少し枯れた話」という本がある。東洋は面白い芸術傾向を持っていて、人が芸道に、精通し円熟して、さらに、枯れて行くのをとても尊ぶ風習がある。


作家でも、「あいつの文章も枯れて来た」というような言葉さえ、世辞と取って差し支えないような習慣が、根強くある。


主に、芸術や芸道の方面では、そうであるが、現在の当たり前な社会人の間では、通用しないような世辞で、こちらの方は、若く見えれば見えるほど、良い世辞となる。


隠居という存在が、通用しなくなってきた理由もそのあたりに求められるかも知れないが。


わたしのブログの「働くということ」のシリーズも、すっかりサボってしまっているし、「音楽は不思議な芸術」も尻切れトンボになってしまっている。


いろいろ、考えていて、気にしてはいるのだが、なかなか、思考が進まないでいる。わたしも、芸道に勤しむ者のように、文章が円熟し、枯れて行きたいものである。