エッセイ 美しい都市 <キエフ>
名ピアニストホロヴィッツは、自分がキエフ出身であることを、生涯誇りと、していたそうである。
キエフは、ソ連邦の頃から、いや、それ以前からも、世界屈指の美しい都として、有名だった。
じつは、ホロヴィッツは、生粋のキエフっ子ではなく、キエフ近郊の生まれなのだそうだが、ホロヴィッツが自分はキエフ生まれだと譲らなかったのは、人情としては頷けるし、このピアニストの偉大な業績に鑑みて、わたしもホロヴィッツが、キエフ生まれであって欲しいと願う者でもある。
そうして、この都市は、都市自体が試練に満ちた都市である。近くには、あの原発事故を起こしたチェルノブイリ原発所があり、また、今回のウクライナ侵攻で、もっとも標的とされる首都となってしまった。
美しい都市には、優れた芸術家が生まれる。モーツァルトが生まれたウィーンのザルツブルグも、わたしは映像で見ただけだが、優雅この上ない美しい都である。
モーツァルト自身は、心底から、自分の生まれたこの土地を、嫌っていたそうだが、モーツァルトの芸術は、ザルツブルグの優雅さを抜きにしては語れない。出自とは、ごまかしのできないもののようである。
わたし自身、自分を振り返って思うのだが、わたしの抽象性に惹かれる性質は、白い都市と言われる名古屋の性情そのままではないかと、反省もしてみるのだが。
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