エッセイ ブランデンブルグ協奏曲 第六番 <レオンハルト>
第六番は、ブランデンブルグの中でも、もっとも渋い、鄙びた曲と言って良いと思う。
編成に、ヴァイオリンが入っていないこともあって、軽快さに欠けた、悪く言えば、鈍重な印象を与える曲である。
わたしは、色々な人の指揮でこの曲を聴いたのだが、その中でも、一番ピッタリと耳に響いたのが、レオンハルトという人の演奏だった。
それで、ブランデンブルグについてはカール・リヒター盤が定番ということになっていて、それについては、わたしには少しも異存はない。ただ、ブランデンブルグ6曲の中で、この第六番に関してだけ言えば、リヒター盤の方は、何か違和感が残る。
一番から五番については、どこにも問題はなく、いや問題がないどころか、非常な名演で、ブランデンブルグに関して言えば、グールドのゴルトベルグ変奏曲の演奏がそうであるように、この演奏が動かしようがない標準として、他の奏者の演奏を圧して、屹立している。
そうして、よくよく聴いてみると、一番から五番は曲として、都会的で、広い意味でスタイリッシュな印象を受ける真新しさがあるのだが、六番の、言わば田舎風の鄙びた味わいに、どうしてもそぐわないのである。
そこで、レオンハルトの演奏を聴くと、この言ってみれば、リヒターより、より学究的で、動きに鄙びたアクセントや鈍いところのあるレオンハルトの演奏の方が、六番には、じつにうまく当て嵌まるのである。
そうした意味で、ブランデンブルグの六番は、バッハの作品の中でも、ある不思議な位置を占める曲のように思える。古拙というのは、当たらないが、十分に鄙びていて、土臭い。興味のある方は、ご一聴のほどを。
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