Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 働くということ 11 <見巧者>

「道」について、色々と、言ってきたわけだが、「働くということ」についての考察を、やめていたわけではない。


わたしの目指す本題は、現代の資本主義経済の直中にあって、働くということの意味合いを、問いたいというものであった。


ただ、この問いは、直球で攻めていっても、決して、陥落しそうもない問いであることは、目に見えていた。わたしは搦手<からめて>から攻めることにした。


そうやって、段々と、文章を積み上げていく中に、「働くということ」について、ふと、気付いた事柄があった。それは、働く人は、働く人その人だけで、意味合いを見出すことは、ほとんど不可能ではないかという事であった。


わたしは、中山みきの言う「傍を楽にする」という意味で言っているのではない。そうではなく、働く人を見る、目そのものと成り得る人が、必要ではないかとかんがえるのである。


芝居に、観客が必要なように、働く人には、それを見る人が要るのではなかろうか。それも、批評し、その働きを判断する、現場監督のような人のことではない。働く人を、ただじっと見て、見続ける人である。これは批評家の目ではなく、目そのものとなるような、優れた小説家や詩人が持っているような目である。日本流に言えば、見巧者の目と言って良かろうか。


<続く>