エッセイ 佳作というもの
確か、ゲーテだったと思うが、佳い作品が生まれるには、ある心の危機が前提として必要なのであると、どこかで言っていたような気がする。
ある文芸同人誌に属していた頃、何人かの人が「どうしても、何も書けない」と嘆いていたことを思いだした。
この人達は、およそ心の危機というものとは、無縁のような幸福感の持ち主達であったことを感じ、先のゲーテの言葉と照らし合わせて、そうかと納得できるものが、あるような気がした。
およそ、人は、心にどのような意味でも、危機を感じていない限り、表現という作業とは無縁なものではないかと思うのである。
ただ、作品に、幸福感の満ち溢れてやまないモーツァルトという大芸術家がいる。そうして、また、この人が音楽家として最大の形式破壊者だったことを、思い合わせれば、先の言葉は決して保留にしなくとも良いような言葉だと思われる。
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