Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 音楽は不思議な芸術 9 <ハイドン>

このシリーズは、忘れていたわけではないが、ハイドンのことを書こうと思って、はたと行き詰まってしまい、放置している。


ハイドンについては、あまり思考を重ねているわけでもなく、また、その音楽も、モーツァルトの亜流を出ないのではないかという、わたしの中に根強くある、ハイドンについての偏見に、邪魔されているからである。それに、ハイドンについては、わたしはとても不勉強である。


ただ、そのハイドン自身は、モーツァルトの音楽をこよなく買っていて、モーツァルトの最初の最大の理解者と言って良いくらいなのだが、モーツァルトの音楽に対するように、ハイドンの音楽に、わたしは夢中になることができない。


ハイドンの代表作といわれているものは、「チェロ協奏曲」にしても、シンフォニーやカルテットのものを聴いてみても、何か、種を全部明かされてから、手品を見せられているというような気にさせられてしまう。この感じは、まったく以て、不当なものであることも、承知はしているのだが。


それでは、お前にハイドンの音楽の何が分かっているのかと問われれば、おそらく、何も、分かっていはしないだろうと応えるしかないような気がする。


ともあれ、ハイドンの音楽は、モーツァルトの音楽と永遠に比べられ、その度ごとに、モーツァルトの後塵を拝さねばならない運命の下にあるのだろうが。


もし、たとえば、先に言った比喩を、読み換えて、種は全部明かした手品だが、それでも尚、見所がある音楽なのであるというようにハイドンの音楽を聴くことができるようになれば、わたしとしても、少しは音楽的に進歩したと言って良いのであろう。


けれども、まだ、そうなる機会は、わたしには訪れていない。