名古屋のお雑煮はとてもシンプルである。お雑煮ということばを使っているのが、どうかと思うくらいのシンプルさである。

正月菜（小松菜）を荒切りし、鍋に適量の水とその正月菜と角切りの餅を入れて煮込み、頃合いを見て醤油で味付けし、餅が軟らかくなったところで、お椀に移し、カツオ節を乗せて、出来上がりである。

日本中で、おそらくこんなにシンプルなお雑煮は、あるまいと思う。だが、こんなにシンプルなのに、毎年食べても飽きない。

わたしの家は貧しかったから、こんな食べ方をするのは、自分の家くらいだろうと、幼い頃は思っていたのだが、名古屋やその周辺を含めて、正月は、こういうお雑煮だということを、後になって知って、吃驚したものである。

名古屋は、じつにプラグマチックで、徹底した簡便さを追求するような土地柄を持っているところと言って良いのかも知れない。