Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

「ソクラテスの弁明」プラトン 岩波文庫

プラトン初期の傑作です。アテネの法廷に立ったソクラテスが不当に断罪され、死罪を言い渡される有名な話ですが、ソクラテスは判決を言い渡された後、親しい人々に不思議なことを語ります。「諸君、驚くべきことが起こった。私のダイモーンがまったく沈黙してしまったのだ。」ソクラテスのダイモーンは、ソクラテスが子供の頃から、その行動の些細なことまで介入し、禁止の鈴のような音を鳴らすのですが、そのダイモーンの音がまったく聞こえなくなったというのです。ソクラテスは自分の死を受け入れてから、尋常な人間とはまったく異なる別の存在、まさしくダイモーンそのものになったと考えて良いのかも知れません。ベルクソンはこのソクラテスのダイモーンについて卓抜な論考を残しています。